Journal de la Rive Droite 右岸通信

物理的には私は右岸にいる 精神的には左岸にいる これは右岸と左岸に解離している私の通信記録

本当と幻想

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秋は恋の季節なのか。

夜の隅田川テラスには春よりも夏よりも秋に恋人達が増える。

毎日のようにそこを歩く私の目からは彼ら/彼女らは一体どこから何しにやってきたんだろと不思議に映る。まあ、そこらへんから愛を語らいにやってきたんだろうけども。

私はと言えば、続く浅い眠りのせいで毎日恐ろしく眠いのをこらえて、しかも、しゃがんで立つと言う動作をするたびに軽い立ちくらみがするので貧血ぎみだなというわけで一日分の鉄分が入ってるという、駒形橋のたもとにある、まいばすけっとで92円に消費税で99円で買った豆乳飲料を手に、ひとりで歩く。

どうせ誰も見てやしないし、とおよそレディーらしいとはいえないけれど、手で口を覆うこともなく、あくびをする。ああ、眠い。なんだってこんなに眠いんだろか。

iPhoneにつながれたイヤホンからはクリープハイプの「本当」が流れている。

クリープハイプはなんだかとても気に入ってしまってよく聞くようになった。

ボーカルの尾崎世界観と言う人はMVを見る限り、まるで松本大洋の描く人みたいな顔をしていて、これまた松本大洋が描く人みたいに歯並びがきれいなのが印象的で、つまり、なんか松本大洋の描く人が具現化してるみたいに見えて、ああー、こりゃもてますね、って感じがした。

私より10歳から20歳若いサブカル女子にはずっきゅーーーんでしょうなあ。

 

こういうくそどうでもいい脳内垂れ流しの日常を書くと、私が知ることになった私の解離という事実が嘘みたいだなと思う。そして、嘘なんじゃないか、夢なんじゃないか、と半ば真剣に思う。

で、私、めっちゃ平常じゃん、普通じゃんって自分を励ますように思うんだけれど、思うそばから、自分がなんか得体の知れない妖怪みたいな気持ちもしてきて、そりゃ、旦那さんも昔みたいに一緒に暮らすことを思い描けないのも無理はないよねって旦那さんに妙に同情してしまいながら、離婚寸前で、無職で、12月が来たら37で、あんた一体全体これからの人生、どうすんのよって焦りもする。

でも、私はお酒には逃げずに、鉄分を補うための豆乳飲料を飲むのだ。

負けてなるものか、とストローを噛みながら歩く。月が綺麗な夜を歩く。

 

今日は昼間は「阿修羅」という本を読んだ。解離性同一性障害の女性が出てくる小説だ。

医者と女性の旦那さんからの語りで出来上がっている物語だ。

私はDIDではないので、いわゆる結晶化された名のついた人格はいないのだが、この女性の旦那さん同様、私の旦那さんもなんか「よく知ってる私」と「全然知らない私」がいるようなので、なんだか身につまされた思いがした。

ネタバレすると彼女(たち)のこんがらがった記憶の糸は治療の成果なのか、自然のなせるわざなのか、ほどけて、一応はハッピーエンドだ。

私のハッピーエンドはなんなんだろう。行き着く答えのない問いは私の部屋を満たし、私はなんだか困ってしまった。気休めに窓を開けたりして、ほんと馬鹿みたいだった。

解離のある人が解離について扱った本を読むのは、あまりよくないこととされているようだ。よくわかる気がした。

 

夜な夜な、川辺で手を握りながら、身体をくっつけあいながら、互いの目を見てくすくす笑って、語り合う彼ら/彼女らはきっと昼間は全然違う顔をしているだろう。

それと私の解離は何が違うんだろうね。

仲のよい二人の間にぐいっと割り込んで、昼間のあなたと、いまのあなたは同一性が保たれているんですか、と聞いてみたい。

もちろん聞かない。私はきちがいではないから。そんなことはしない。

でも、不思議なんだよ。そして、あなたたちみたいな恋愛中の相手に自分は受け入れられているのだという喜びに満ちた感覚がとてもうらやましい。

私もかつて恋愛で得てきたはずのその感覚は自分に解離があると知ったいまではなんだか残念!全部幻想でしたー!と神様にいわれた気がしているんだもの。

それだけじゃない、人生の確かにあった手応えみたいなもの全部、幻想だった気がするんだ。

まあ、ありとあらゆる恋愛が、生活が、幻想なんだけどさ。

「本当」って大抵エグいもんだから、みんな幻想を信じて、願って生きるのかな。

人間なんてミスユニバースもそこらへんのおじさんも一皮むけば肉と内臓と骨だ。肉と内臓と骨は、それぞれ、タンパク質とか脂質とかカルシウムとかだ。

みんなみんなそんなこと百も承知で生きてるはずなのに、恋に落ちたり、自分の親や子どもを特別に大切に思ったりするんだから、なにがどうなっているのやら。

私にはさっぱりわからないよ。不思議でしかたがないよ。

私は幻想からこぼれてしまったみたいだよ。